忍者ブログ

みえない雲の向こうに視るべきもの①~放射線が危険な根源的な理由

『みえない雲の向こうに視るべきもの』(<小出裕章>こいで・ひろあき:京都大学原子炉実験所)より転載します。
----------------------------------------------------------------
 ~前略~

Ⅱ.放射線が危険な根源的な理由

●放射線の発見と被害の歴史

人類が放射線を発見したのは1895年、ドイツのレントゲンが最初でした。そのときレントゲンは陰極線管という実験装置を使っていて、そこから目に見えない不思議な光が出ていることを見つけたのでした。そしてそれを「X線」と名づけました。それ以降、たくさんの人たちがX線の正体を探るための研究を始めました。1896年にはフランスのベクレルが人工の実験装置ではなく、自然にある物質であるウラン鉱石からも同じような光線が出ていることを発見しました。そして、不思議な光を放出する能力を放射能と名づけました。さらに1898年にはキュリー夫妻がウラン鉱石の中からラジウムとポロニウムを分離し、それらこそ放射能を持っている正体であることを突き止めて、放射性物質と名づけました。大変優秀な学者たちが活躍した時代でしたが、いかんせん当時は放射線が何であるか、放射能が何であるかを知らない時代でしたし、被曝することがどれだけ恐ろしいことかも知りませんでした。そのため、五感に感じない放射線に被曝して、キュリー夫妻を含めたくさんの人たちが命を落としました。

●東海村事故での悲惨な死

1999年9月30日、茨城県東海村の核燃料加工工場(JCO)で、「臨界事故」と呼ばれる事故が起こりました。工場にあった1つの容器の中で、核分裂の連鎖反応が突然始まり、作業に当たっていた3人の労働者が大量の被曝をしたのでした。放射線の被曝量は物体が吸収したエネルギー量で測ります。単位は「グレイ」で、物体1kg当たり1ジュール(0.24カロリー)のエネルギーを吸収した時の被曝量が1グレイです。従来の医学的な知見によると、およそ4グレイの被曝を受けると半数の人が死に、8グレイの被曝をすれば絶望と考えられてきました。事故で被曝した労働者の被曝量はそれぞれ18、10、3グレイ当量(グレイ当量は、急性障害に関する中性子の危険度をガンマ線に比べて1.7倍として補正した被曝量)と評価されました。
特に高い被曝を受けた2人の労働者については単なる被曝治療(被曝の治療は実質的には感染予防と水分、栄養補給くらいしかない・・・)では助けられないため、東大病院に送られました。その後、感染防止や水分・栄養補給はもちろん、骨髄移植、皮膚移植などありとあらゆる手段が施されました。彼らは造血組織を破壊され、全身に火傷を負い、皮膚の再生能力を奪われていました。そして、天文学的な鎮痛剤(麻薬)と毎日10リッターを超える輸血や輸液を受けながら苦しい闘病生活を送りました。彼らは私の予想を遙かに超えて延命しましたが、最大の被曝を受けた大内さんは12月に、2番目の被曝を受けた篠原さんは翌年4月に帰らぬ人となりました 。
人間という生き物は体温が1度や2度上がっても死にません。しかし、悲惨な死を強いられた2人の労働者が受けたエネルギーは、彼らの体温を1000分の2~4℃上昇させただけのものでしかありませんでした。

●微小な被曝でも危険はある

放射線に被曝する場合、ほんのわずかのエネルギーで人間が死んでしまう理由は、生命体を構成している分子結合のエネルギーレベルと放射線の持つエネルギーレベルが10万倍も100万倍も異なっているからです。そのことは、被曝量の多寡には関係なく、個々の細胞あるいはDNAのレベルでいえば、同じ現象の被害が起こります。被曝量が多くて、細胞が死んでしまったり、組織の機能が奪われたりすれば急性障害となり、そこまでのダメージを受けなければ、傷を受けた細胞がやがてガンなど晩発性障害の原因になります。いわゆる「許容量」と呼ばれるものも「安全量」ではなく、「がまん量」に過ぎません。さらに、今日の原子力利用においては、利益を受ける集団と危険を押し付けられる集団が乖離していて、実際には「がまんさせられ量」になっています。
原子力を推進している人たちは被曝量が少なければ安全であるかのように装っていますが、放射線の物理的な性質そして生物の細胞の構造・機能からして、どんなに微量の被曝であっても影響はあります。原子力を推進する人たちも、微小な被曝でも危険がゼロとは言えないため、たとえば図2を示し、被曝には「容認できるレベル」があると言うようになりました。しかし、自分に加えられる危害を容認できるか、あるいは、罪のない人々に謂われのない危害を加えることを見過ごすかは、何処かの専門家が決めるのではなく、一人ひとりが決めるべきことです。

●子供の被曝は何としても避けなければならない

私たち人間の成人の身体はおよそ60兆個の細胞でできています。でも、一番初めは精子と卵子が結合して生まれたたった一つの細胞、いわゆる万能細胞です。そのたった一つの細胞が持っている遺伝情報を、細胞分裂によって複製しながら、目ができ、手ができ、頭ができ・・・といったように人間が作られます。まったく命とは神秘的なものです。もし遺伝情報に傷が付けば、傷を持った遺伝情報が複製されることになります。そのため、細胞分裂の活発な時に被曝をすると、狂った遺伝情報がどんどん複製されることになってしまい、若く、生命活動の活発な子供ほど放射線感受性が高いことになります。したがって、同じ量の放射線を浴びるのであれば、大人よりも子供の方が被害を多く受けます。放射線の年齢別の感受性を図2に示します。20歳代、30歳代の大人に比べれば、赤ん坊の放射線感受性は4倍も高いし、逆に50歳以上の大人は、1桁も低くなります。
----------------------------------------------------------------
続く


猛獣王S
PR

この記事にコメントする

お名前
タイトル
メール
URL
コメント
絵文字
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
パスワード

ランキング

にほんブログ村 環境ブログへ お勧めサイトランキングへ

カウンター

カレンダー

10 2017/11 12
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30

バーコード

ブログ内検索

P R